3Dプリンタルアー BREATHRIDE 110F|磯ヒラスズキ対応のリップレスミノー開発ストーリー
- 山下勇磨

- 11月4日
- 読了時間: 5分
更新日:11月5日
【BREATHRIDE 110F】誕生までの開発ストーリー|耐ストラクチャーの“リップレス
革命”

1. はじまり ― 理想のリップレスミノーを求めて
「3Dプリンタで、自分の理想のルアーを作ってみたい。」そんな想いから始まったのが、BREATHRIDE 110F(ブレスライド110F)の開発です。
最初の構想は2020年7月。河川でのシャローエリアを狙うボトムコンタクトミノーが原点でした。しかし環境が変わることで、荒れた磯でのヒラスズキゲームにも対応できるような“リップレスミノー”を作りたいという方向に進化していきます。
磯での釣りでは、ストラクチャー(岩や根)への接触は避けられません。市販ルアーではリップ破損や内部浸水が起こることもあり、「耐ストラクチャー性と安定アクション」を両立できる構造を目指しました。



2. 設計 ― 積層構造と固定重心が生み出す安定感
2021年5月、開発を再開。前作「HAPPYRIDE」をベースにスリム化コンセプトを採用し、デザインを一新しました。
3Dプリントの強みを活かして、細部のチューニングを繰り返します。設計段階で特に重視したのは、次の3点。
積層構造による高いボディ強度
固定重心による安定したスイミング
リップレスらしいナチュラルなアクション
この3要素を軸に、耐久性と操作性を徹底追求しました。
初期のVer.0モデルは強度不足やリップ部の破損など課題も多く、改善を重ねながら強度と動きの両立を目指していきます。



その後、フィールドテストしつつ細部を見直し。ラインアイの大型化や形状Z(高さ)を5mm変更を加えていくも思う通りのアクションが導き出せない日々が続く・・・。そして、2022年5月のスライスソフトをCURAへ見直すことでより多くの設定や変更が可能としアクションを煮詰めていく。外部シェルの厚み、内部構造、温度管理、ラフト、サポートのパターンなど変更できる箇所が大幅に増えた。
特にFDM方式の3Dプリンタ出力物なので安定した出力が求められるので、外気温からノズルやフィラメント温度の微調整もかなり重要となった。機械本体の覆われたクローズ型の3Dプリンタの方が温度管理しやすい。
3. 試作と改良 ― 3Dプリンタだからこそできたチューニング
3Dプリンタルアー開発で使用したのはPETGフィラメント。ABSより柔軟で耐衝撃性が高く、ヒラスズキゲームのような過酷な環境にも耐えやすい素材です。
試作はスライスソフト「Ultimaker Cura」で行い、出力設定を何度も調整しながら、ルアー内部構造を最適化。
特に調整が難しかったのが、ノズル温度と外気温のバランス。出力中の温度変化で層が荒れることもあるため、クローズドタイプの3Dプリンタで安定した環境を確保しました。
Ver.1.0モデルでは以下のような改良を実施:
ボディ幅を3mm短縮、高さを1.5mm延長
ウェイト配分を0.5g単位で再設計
ヘッド部の強度を向上、外装を軽量化
これにより、低速域でも繊細にアクションが出るようになり、飛距離・浮力・安定性のすべてが向上しました。
試作は累計14回。ノズル温度・壁厚・サポート設定など、1つひとつの変更が完成度を高める大切なステップでした。
Ultimaker Cura 公式サイト(https://ultimaker.com/software/ultimaker-cura)


4. 実釣テスト ― “ブレスライド”という名の意味
フィールドテストでは、荒れた磯や雨後の汽水域など、さまざまな条件で実釣を実施。ヒラスズキ狙いのほか、シーバスでもテストを繰り返しました。
「BREATHRIDE」という名前には、“水の呼吸に合わせて生きるように泳ぐ”という意味を込めています。その名の通り、Ver.1.0モデルでは自然な揺らぎと安定した姿勢を実現。荒波の中でも、ルアーが意図したコースを通すことができました。
フックサイズやスプリットリングを変えることで、アクションの強弱を微調整できる点もブレスライドの魅力です。まさに「自分仕様」に仕上げられる3Dプリントルアーといえます。
5. 完成スペック ― BREATHRIDE 110F の全貌

スペック | 内容 |
モデル名 | BREATHRIDE 110F(ブレスライド110F) |
サイズ | 110mm |
重量 | 約16g(フックなし) |
タイプ | フローティング |
素材 | PETG(3Dプリント製) |
重心 | 固定重心構造 |
対象魚 | 磯ヒラスズキ・シーバスなど |

今後の展開と開発者コメント
今後は、3Dプリンタの新技術や異素材での造形にも挑戦していく予定です。また、河川シーバス・ボートゲームなど、別フィールドでのテストも進行計画中。
3Dプリンタでのルアー制作は、出力設定ひとつでアクションや耐久性が大きく変わります。この「試行錯誤を楽しむ」プロセスこそが、最大の魅力かもしれません。
開発者として感じるのは――「強度を保ちながら、どれだけナチュラルな泳ぎを出せるか」。このテーマに終わりはなく、3Dプリントだからこそ無限にアップデートを重ねられます。
7. 開発者プロフィール
執筆者:aplamodel(山下 勇磨)
プロフィールリンク:山下勇磨 |経歴・釣歴❘A.P.P フリーランスサービス
3Dプリンタを活用したルアー開発を中心にA.P.Pとして活動。造形技術と実釣性能の融合をテーマに、オリジナルルアーを制作・発信中。
X(Twitter)でブレスライド110の過去開発状況の投稿もアップしてます⇩




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